2011年6月18日土曜日

「ガンマ線を受けても,ほとんどの生体分子は,再びもとの状態に修復される.ところが,きわめて小さい確率で誤った修復が行われる.」

1シーベルトのガンマ線を体重 50 kgの人が全身被曝すると,50 ジュール= 3.12×1020eVのエネルギーを受けたことになり,これは全身の約60兆個の細胞1個当たり平均して52万カ所以上の電離作用を受けることになる.

電離作用を受けても,ほとんどの生体分子は,再びもとの状態に修復される.ところが,
きわめて小さい確率で誤った修復が行われる.
特に電離作用がDNA分子の2重らせんの接近した箇所で起こると,切断箇所が誤って接合される確率が大きくなり,もとのDNA分子とは違うDNAになって染色体異常をつくり出す.

染色体異常で次の細胞分裂が不可能になると,細胞は自死し,多数の細胞が自死すると急性放射線症を引き起こす.
染色体異常を持つ細胞が細胞分裂できても,染色体異常を持つ細胞を再生して癌細胞につながる可能性が生まれる.



遠距離では放射性降下物の放射性微粒子を体内に摂取したことによる内部被曝が主要になる.呼吸や飲食で取込んだベータ線を放出する放射性微粒子が腸壁に到達すると,ベータ線は密度の高い電離作用を行うので腸壁に損傷を与えて下痢を発症させる.



沢田昭二(名古屋大学名誉教授)『放射線による内部被曝』-福島原発事故に関連して-
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/blog-post_20.html?spref=tw