白い杖
いつもクルマで通る交差点を
母親を引いて
3歳か4歳の女の子が
歩いていた。
そう、
母親は目が見えない様子。
ある記憶が蘇った。
健常者の勝手な見方かもしれないし、
想像でしかない世界であるが、
全盲でも杖一本で
歩道を歩く姿を
よく見かける。
今日見かけた母親を
2〜3年前にも同じ交差点で
見かけている。
白い杖ももちろん
使っていたけれど、
交差点に面した建物の壁に触れながらの
たどたどしい歩行だった。
しかも、背中に子どもを背負っていた。
その慣れないような姿を見ながら、
最近になって目が見えなくなったのかな?
どうやって育児生活をしてるのだろう?
と、勝手な憶測をしていた。
そして、
今朝、あの背中の赤子だった子が
一生懸命母親を
引っ張ってる姿を見て
あの時、
母親は精一杯、
子どもを守ろうとしていたのだと
なぜか想像した。
自分がコケれば
子どもの命だってわからない。
細心の注意を
払って歩いていたのだ。
わずか2〜3年だけど
手をつなぐ母子は
とても新鮮な映像として
映った。
子どもは母親がいないと
生きていけないし、
母親にとっては、
子どもが白い杖にもなり
否、
健常者では想像ができないくらいの
母親への愛情を育むのだろうと
目頭がゆるんだ。
同じ交差点で
時々、出会えたらなと
思いながら
青信号でアクセルを踏んだ。